疲労困憊、魔王様

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              どれくらい経っただろう。 いつしか、静かな寝息が聞こえきた。 「すーっ……すーっ……」 信頼する者にしか見せない、安心しきった寝顔。 自惚れかもしれないが、そんな感じだ。 暫く、彼女の顔を観察する。 整った顔立ちに、白い肌。 こうして近くで見ていると、久々だからだろうか?  愛おしさが、込み上げてくる。 「…………はっ?!」 頭を振り、さっきまでの考えを放棄する。 せっかく、安らかな眠りについているのだ。 彼女はそっとしておき、俺は出て行った方が良さそうだ。 そう思い立ち、先ずは、握りしめた手を外し…… 「……?」 外れない。 もう一度、彼女の手を外しにかかる。 さっきよりも、少し強めに。 「…………。」 しかし、結果はご覧の通り。 実は、眠ったふりをしているのではないか、と疑いたくなる程に、強く握り締められていた。 汗ばむ手のひらが、彼女に申し訳ない気がする。 そのまま、どうしたものかと困り果てていると、 「ん……ぅ、む……」 事態はさらに、悪化した。 ああ、すっかり忘れていた。 彼女が眠った時の癖を。 そう、抱き癖……。 ほんの一瞬で、エリスは、片腕に抱きついていた。 はて、以前にも同じような事があったような……。 「……どうしよう?」 既視感を感じながら、1人呟いても、何も変わりはしなかった。 身動きすることも、ままならない状態に、唖然とするしかない。               
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