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エリスは、というと、
「ふふっ……」
夢でも見ているのだろうか、幸せそうに微笑んでいた。
夢見が良いのなら、尚更、起こす訳にはいかない。
「うーん……」
考えを巡らせ、たどり着いた答えは、諦めに近いものだった。
(このまま、エリスが起きるまで待つか……)
ベッドの横にもたれ、肩の力を抜く。
いつも見せる顔とは別の、無邪気な寝顔。
そっと顔を寄せると、寝息が鼻にかかり、くすぐったかった。
目を細め、サラサラの髪を撫で下ろしながら、耳元で口を開く。
「おやすみ」
返事の代わりの、ふん、という鼻息は、普段通りの素直じゃない彼女の返事に、似通っていた。
…………。
どのくらい、時間が経ったのだろう。
俺は、うつらうつらとしながらも、眠らないように頑張っていた。
彼女と一緒に横になればいいと、眠気がごもっともな意見をぶつけてきても、こうして起きていた。
なんたって、寝ぼける彼女を見る機会なんて、そうそう無いだろうから。
(……眠い……)
今まで起きてきた意地と、ある種の使命感で、意識を保つ。
……不純な動機なのに。
それから、暫くして、
「……、ぅ……」
彼女は、ぴく、と小さく身震いすると、薄く瞼を開いた。
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