疲労困憊、魔王様

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              「…………。」 俺は、あえて声をかけず、見守っていた。 彼女が寝ぼけた状態だと、どんな行動をとるのだろうと、内心、期待しながら。 「………………。」 エリスは、薄目のまま、辺りをゆっくり見回す。 自分以外の気配に、気づいたが故か。 それとも、ただの反射的な行動か。 とにかく彼女は、隣にいたアレクの存在に、気づいたようだった。 (……もしかして、怒ってるのか……?) 目が合ったまま、視線が外れない。 睨まれているように、見えなくもなかった。 暫くの間、無言で睨み合って(?)いると、 「うわっ!?」 胸ぐらを掴まれ、引っ張られる。 寝起きとは思えない力で引かれ、抵抗する間もなかった。 目と鼻の先には、エリスの顔が。 胸元にあった小さな両手は、両頬に。 そして、瞼は閉じていた。 「んっ!?」 甘い匂いと共に、少し乾いた唇が押しつけられる。 思いもよらない事態に、頭がパニックを起こし、動作が固まる。 その間も、彼女が離れる様子はなかった。 永遠にも感じられる時……という程でもなかったが、数ヶ月前の口づけに比べれば、遙かに長いのは確実だった。               
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