1565人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
「…………。」
俺は、あえて声をかけず、見守っていた。
彼女が寝ぼけた状態だと、どんな行動をとるのだろうと、内心、期待しながら。
「………………。」
エリスは、薄目のまま、辺りをゆっくり見回す。
自分以外の気配に、気づいたが故か。
それとも、ただの反射的な行動か。
とにかく彼女は、隣にいたアレクの存在に、気づいたようだった。
(……もしかして、怒ってるのか……?)
目が合ったまま、視線が外れない。
睨まれているように、見えなくもなかった。
暫くの間、無言で睨み合って(?)いると、
「うわっ!?」
胸ぐらを掴まれ、引っ張られる。
寝起きとは思えない力で引かれ、抵抗する間もなかった。
目と鼻の先には、エリスの顔が。
胸元にあった小さな両手は、両頬に。
そして、瞼は閉じていた。
「んっ!?」
甘い匂いと共に、少し乾いた唇が押しつけられる。
思いもよらない事態に、頭がパニックを起こし、動作が固まる。
その間も、彼女が離れる様子はなかった。
永遠にも感じられる時……という程でもなかったが、数ヶ月前の口づけに比べれば、遙かに長いのは確実だった。
最初のコメントを投稿しよう!