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「こんにちは、シベリア。…あぁもうこんばんはかな?」
日も隠れ始めた午後6時。
雨が降っているせいか既に村は闇の中だ。
いつもの様なやる気のない話し方でそいつは話しかけてきた。
「おう。こんばんは、だな。てか傘も差さずになにやってんだ、風邪ひくぞ。」
いつもの様に挨拶をする。
いつも通りの、いつも……
「…普通じゃねえよ!何だよ、その、そ、ソレ!、さ魚か?!」
いつも通りでは無かった。
何が大きな魚らしきものを抱えていて顔が見えない。ついでに体も見えない。
正面から見たら魚がタテになって動いているように見えるだろう。
…、それ以前に魚に見えるかが問題だが。
「あぁ、コレ?シーラカンスだよ。知らない?雨の日だけ釣れるんだ。」
いつものような抑揚の無い声で淡々と話している。
ああああ!まだ生きてる!腕から逃れようと元気に跳ねてるよ!
「ポケットに入れようと思ったけど大き過ぎて入らなかった。」
「入れようとか考えんなよ!」
博物館に寄贈してくる。と言い残し、立ち去った。
しばらく唖然としてしまったのは仕方がなかろう。
雨の夕方注意報
(ぎゃー!)
(どこからか悲鳴が聞こえたのは空耳だと信じたい…)
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