1236人が本棚に入れています
本棚に追加
/309ページ
梅雨に近付くこの時期、良く晴れているが気温の上昇に伴って少し湿っぽい空気が流れる、そんな昼下がり。
休み時間の学生プラザ前はサークルや部活の勧誘でビラを配る上回生で溢れていたが、現在はその姿も消えている。
新歓の時期も過ぎたし、当然か。時期的に、多くの学生は中間試験の準備に勤しんでいることだろう。
「……映研?」
「ああ、知ってる。名前だけやけど」
「そっか」
学生プラザ内にある小綺麗なカフェテリアに優人を含めて野郎が3人、ドリンクやサンドイッチ、クレープを机に並べている。
時刻は3コマ目終わりの午後3時過ぎ。いわゆる“おやつの時間”。
「あー……たしか部室で四六時中映画を観てるって、それくらいなら聞いたことあるな」
「それはまぁ“映画研究”同好会だからな」
それくらいのことはやっているだろう。というか、それが全てな気がするが。
「そんで、優人。その“映研”がどうかしたん?」
「入んのか? 今さら?」
「いや、声を掛けられただけ」
2回生の今になって新しくサークルに入ろうなんて思わない。
そう、俺は声を掛けられただけ。俺は。
時は2日前にさかのぼる。
最初のコメントを投稿しよう!