4.葵

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   梅雨に近付くこの時期、良く晴れているが気温の上昇に伴って少し湿っぽい空気が流れる、そんな昼下がり。  休み時間の学生プラザ前はサークルや部活の勧誘でビラを配る上回生で溢れていたが、現在はその姿も消えている。  新歓の時期も過ぎたし、当然か。時期的に、多くの学生は中間試験の準備に勤しんでいることだろう。 「……映研?」 「ああ、知ってる。名前だけやけど」 「そっか」  学生プラザ内にある小綺麗なカフェテリアに優人を含めて野郎が3人、ドリンクやサンドイッチ、クレープを机に並べている。  時刻は3コマ目終わりの午後3時過ぎ。いわゆる“おやつの時間”。 「あー……たしか部室で四六時中映画を観てるって、それくらいなら聞いたことあるな」 「それはまぁ“映画研究”同好会だからな」  それくらいのことはやっているだろう。というか、それが全てな気がするが。 「そんで、優人。その“映研”がどうかしたん?」 「入んのか? 今さら?」 「いや、声を掛けられただけ」  2回生の今になって新しくサークルに入ろうなんて思わない。  そう、俺は声を掛けられただけ。俺は。  時は2日前にさかのぼる。  
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