0.世界 prologue

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   生命を“デザイン”したのは“神様”だと、ある人はいう。  現在、科学が生活の隅々まで浸透し、大勢の人間が特定の宗教観念に固執していないこの国で、それはなかなか受け入れられない考え方だろうと思う。  しかしこの考えは、海を渡った先の先進国の中では、決して非常識で馬鹿馬鹿しいものでもない。  科学に慣れ親しんだ学者や一般人に、少なからず受け入れられている。  “神様”は生命を創れる。  何せ、生命の発生を見た人間はいないのだ。見えない“神様”や“意志”が居てそれが働きかけて生命が生まれたと、そんなことも考えられるのだろう。  今日日の科学ですら、解明できない物事はある。科学はまだ“神様”を完全否定出来るほど万能ではない。  “神様”はいるのだろうか?  しかしながらこの国に生まれた自分は、もちろん“神様”なんて本気で信じてなんかいない。  いてもいなくても、今は別に困ったりしない。  いつの世も  人の世は人が全てだと思うから。  味気無いだろうか? しかしやはり、信じられないものは信じられない。  ただ、  都合が良いかもしれないが  ただ、  馬鹿馬鹿しいかもしれないが  ただ、  もしいるなら、願わくは、  やさしい“神様”であって欲しい。    そう思う。  
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