0.世界 prologue

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   するとすぐにピーッという高い電子音と共に防火用のシャッターが閉まり、分厚いそれが通路を遮断した。 「ひとまずはこれで……」  男は慣れない運動で乱れた呼吸をゆっくり整え、無表情で自分を見上げてきていた少女をまた抱き抱える。  そしてけたたましい警報音が鳴り響く中ゆっくり前へ進み、男の背丈と同じくらいの大きさの、銀行の金庫のようにやたら厳重そうな扉へ近付く。 「これだな」  男はそこでまた少女を下ろし、懐からカードキーを取り出してその扉の脇に設置されている電子機器を操作する。 「頼む、開いてくれ」  緊急時につきパスコードが書き換えられている可能性があるのだ。  祈るようにそう呟いて男は懐から取り出したカードキーを電子機器に通す。 「…………」  するとまるでその祈りを聞き入れたかのように、扉はゴトンと重々しい大きな音を立てて僅かに開く。 「はあ……」  安堵からか、男は大きく息を吐く。  警報ランプに赤く照らされた施設内に、外の眩しい光が扉の隙間から差し込む。  そこには少女の知らない世界が、本当の世界が広がっている。  男はゆっくり振り返り、そこに立ち無垢で無表情のまま見上げてくる少女へ視線を落とす。  
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