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「やってくれたわね、阿達のヤツ」
手元の用紙を自身のデスクに叩き付け、白衣の女が毒づく。スラリと背が高く、長い黒髪を後ろでまとめ、厚化粧で唇は真紅。
どことなくキツい印象を受けずにはいられない女性。
叩き付けられたその用紙には監視カメラの映像をコマ撮りした画像が、施設内を男が少女を抱えて疾走している様子が鮮明に映し出されている。
「どうしますか、奥瑪<アオマ>室長?」
「どうするもこうするもないわ! “アレ”無しでは計画が立ち行かなくなる、わかっているでしょう?」
奥瑪と呼ばれた女は苛立ちを隠せないのかやや言葉を荒げ、同じ白衣姿の部下の男はビクビクしながら佇む。
「……院長や倫理委員会に悟られないように捜索するしかないわね」
「しかし、我々だけでは困難かと」
「そんなことはわかっているわ!」
態度にも苛立ちが出てしまうのか、奥瑪は自身の手を机に叩き付ける。
「……上に掛け合って助力を請うしかないわね」
「しかしっ、それでは室長の責任を追求されてしまいます!」
「はっ、何を言っているの? 私の立場はそんなに安っぽくないわ」
部下の心配を杞憂だと鼻で笑い、部屋の本棚に向かう。
そこには沢山の専門書、さらに分厚いファイルが並んでいるが、彼女はその中に隠されたブランデーとグラスを取り出す。
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