0.世界 prologue

9/9
前へ
/309ページ
次へ
  「……ここまできた計画、あんな男一人に邪魔されてなるものか……」  一人呟くようにそう言って彼女はブランデーを一気に呷る。しかしまだまだ彼女の不機嫌は治らず、グラスが乱暴な音を立てて机に置かれる。 「室長、あまり飲酒されない方が……」 「上には私が掛け合う。手段は問わないわ、阿達を探し出しなさい。そこに“アレ”もいる」 「えっ……はい?」 「実験動物<モルモット>になりたいの!? さっさと動けっ!!」  いきなりの彼女の絶叫に震え上がった部下は、返事もせずに慌てて部屋を飛び出した。  独りになった部屋で、彼女はまたブランデーを呷る。 「逃がさないわよ──イヴ」  叩き付けた時に机から落ちた画像に写る少女を見下ろし、奥瑪はそれを睨み付ける。  それはまるで蛇のように、見る者に畏怖を植え付ける。そんな獰猛な表情だった。  
/309ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1237人が本棚に入れています
本棚に追加