蒼子~その①

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「晴にぃ?」 ベッドの上で、晴にぃに背中を向けられ、あたしは一気に不安になる。 黒い、その不安の塊は、あたしを、ほらみろって嘲笑う。 ―こいつだって、結局、他の男と変わらない。 そんなはずはない。 あたしは、急いで目の前に広がる、意地悪な顔をした不安の塊を首を振って追い払った。 晴にぃは違う。 晴にぃは、あたしの気持ちを気遣ってくれてるだけだもの。 だけど、晴にぃの背中を見ていると、あたしの不安はまた、増殖していきそうで、あたしは 耐えられずに目の前の背中に密着する。 ぴったりと隙間なく寄り添うと、 晴にぃの着ているシャツから、普段使っている洗剤の匂いがして、あたしの胸の奥が軋む。 晴にぃのやせ形で、引き締まった背中に、あたしはドキドキしながら、もう一度、晴にぃの名前を呼んだ。 「ん?」 いつもと変わらぬ短い返事。 でも、だからこそ、あたしはとても、安心していた。 晴にぃは、いつも一緒。 出逢った頃から、何も変わらない。 あたしが自分で申告するより先に、さりげなく、まるで今、思い付いたかのように、あたしが望まないことを、排除してくれる。 晴にぃは、知らないだろうな。 あたしがどんなに、晴にぃに感謝しているか。 どんなに信頼し、 どんなに救われているのか。 そして晴にぃに、 あたしがどんなに想いを募らせているのか…なんて。 言葉にも、態度にも、表すことの出来ないあたしが、伝えられようもないけど。
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