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「晴にぃ?」
ベッドの上で、晴にぃに背中を向けられ、あたしは一気に不安になる。
黒い、その不安の塊は、あたしを、ほらみろって嘲笑う。
―こいつだって、結局、他の男と変わらない。
そんなはずはない。
あたしは、急いで目の前に広がる、意地悪な顔をした不安の塊を首を振って追い払った。
晴にぃは違う。
晴にぃは、あたしの気持ちを気遣ってくれてるだけだもの。
だけど、晴にぃの背中を見ていると、あたしの不安はまた、増殖していきそうで、あたしは 耐えられずに目の前の背中に密着する。
ぴったりと隙間なく寄り添うと、
晴にぃの着ているシャツから、普段使っている洗剤の匂いがして、あたしの胸の奥が軋む。
晴にぃのやせ形で、引き締まった背中に、あたしはドキドキしながら、もう一度、晴にぃの名前を呼んだ。
「ん?」
いつもと変わらぬ短い返事。
でも、だからこそ、あたしはとても、安心していた。
晴にぃは、いつも一緒。
出逢った頃から、何も変わらない。
あたしが自分で申告するより先に、さりげなく、まるで今、思い付いたかのように、あたしが望まないことを、排除してくれる。
晴にぃは、知らないだろうな。
あたしがどんなに、晴にぃに感謝しているか。
どんなに信頼し、
どんなに救われているのか。
そして晴にぃに、
あたしがどんなに想いを募らせているのか…なんて。
言葉にも、態度にも、表すことの出来ないあたしが、伝えられようもないけど。
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