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俺は、杉田くんの言葉を最後まで聞かずに、事務所を飛び出した。
受付の前を通り、表のホテルの入口から外に出る。
すでに、通りには蒼子の姿はない。
学校に向かう道にも、一応見てみた、反対側の道にも。
急いで、携帯電話にもかけてみた。
応答はしたが、出ない。
やっぱりおかしい。
俺の中に、ずっとあった違和感が、疑問から確信に変わる。
直接連絡もせずに、届け物を持ってくること自体が、蒼子らしくない。
極力、関わり合う人を作らないようにしている蒼子は、今まで何度かあった忘れ物を届けてくれる時は、俺にまず連絡し、
それから、わざわざ近くのコンビニや本屋などで待ち合わせをした。
俺と一緒に暮らしていることも、他人には知られたくないみたいで、
学校の友人には、父親と暮らしている言ってあるらしかった。
確かに、女子高生と年の離れた異性のいとことの同居は、知られたら変な勘繰りをされかねない。
しかもすでに、俺と蒼子は勘繰り以上の関係にある。
俺は、蒼子の気持ちを尊重した。
結婚したことも、
ホテルの従業員に報告したが、相手は誰かなどの詳しい情報は明かしていない。
俺が、かなりの年上の人妻ばかりと関係を持っていたことを、薄々知るホテルの従業員たちは、
勝手に年上のバツイチとかバツニの女性にでも引っ掛かったのだろうと噂しているようだった。
俺は、噂が蒼子のことを悟られないようにする、調度いいカモフラージュになると思い、あえて何も否定せずにいた。
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