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あの日から、あたしは新生蒼子になった。
生まれ変わったつもりで、
新しい人生への一歩へ踏み出す気持ちになれた。
あたしを最初から全く知らないひとばかりの中は、思っていたよりも居心地は悪くなかった。
上手く感情を表に出せないあたしの、それは特性だと、美咲も、その後徐々に打ち解けていったクラスメートも、何の疑問も持たずに受け入れてくれた。
日下部の伯母が、なぜ、あたしを自分の実家から遠く離れた土地へ行くように進めてくれたのか、わかった気がした。
―思い出せない過去に縛られる必要はない。
新しい未来に目を向けなさい。―
晴にぃと暮らしだしてすぐのころ、晴にぃの家の近くの中学に編入したものの、
どうしても上手く他人とのコミュニケーションが取れないあたしの元に、ある日訪れた伯母が言った言葉。
怪我をし記憶を失い入院中だったあたしの元に、あしげく通ってきた、空白の1年の間に知り合い、友達だったという女の子たちが口々に言っていた、あたしの知らないあたしの姿に囚われ、
違和感と羨望と嫉妬とそしてなんともいえない取り残された感を感じて自分を見失いかけていたあたしの心に、
伯母の言葉が小さな希望の光となって、ずっと残っていた。
その光に、力を与えてくれたのが美咲なのだ。
「ありがとう。」
あたしは美咲の右肩に頭を擦り寄せ、ぴったりと寄り添った。
「心配されると、嬉しい。」
「もう!変な子なんだから。」
そう言いながらも、
美咲は満更でもない顔で、少し頬を赤らめた。
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