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「蒼子、もうひとつの噂話知ってる?」
授業開始5分前のチャイムと共に、教室に入ったあたしたちは、窓際のいつもの場所に並んで座る。
「知ってるよ。それは。」
「お前らが、デキてるって話だろ?」
突然、前に座っていた男子が、振り向き様に話に割って入ってきた。
「氷の美少女と日だまりの美少女…相反する2人がいつも仲睦まじく連れ添っているんだから。
2人とも、男の影はないし、怪しまれても仕方がないんじゃないの。」
「やだな、木下(キノシタ)くん。
蒼子は確かに美少女だけど、私は違うよ、普通だもん。」
美咲が、顔を真っ赤にして、あたしたちと1年の時からクラスが一緒で、何かと絡んでくる、見た目も行動も軽い雰囲気全開の木下に、反論する。
「いや、美咲ちゃんは、この女の側にいることで、更に輝いてみえるんだよ。この女の冷たさを、和らげてるっていうのかなぁ。
こいつから笑顔を引き出せるのも美咲ちゃんだけだろ?」
「木下。」
あたしは、木下のほうを見ずに、ピシャリと言った。
「毎回、うるさいよ。
あたしたちに絡まないで。」
「俺は、美咲ちゃんと話を…。」
「先生きたよ。」
いいタイミングで現れた先生に珍しく感謝しつつ、あたしは、冷たく言った。
「蒼子…。」
美咲が、ハラハラしながらあたしと木下を見比べている。
不服そうな表情をあたしに見せつつ、木下は前を向いた。
あたしは小さくため息をつく。
木下は1年の時から、あたしに度々ちょっかいを出してきて、挙げ句に、2年の終わりに、あたしのことが好きだと告白してきた。
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