蒼子~その②

7/19
前へ
/345ページ
次へ
あたしは初対面の頃から、この男のことなど眼中になかったし、できればかかわり合いになりたくないと思っていた。 なぜなら木下というやつは、見た目も行動も言葉も何もかもが軽くて、信用できなかったから。 それに、だいたいあたしは晴にぃ以外のひとに、興味はない。 だから、告白されたその場で、きっぱりと断った。 そしたら木下は何を思ったのか、 今度は美咲を口説き出した。 こっちが駄目ならあっち。 そんな軽い木下の言動に、あたしは更に幻滅した。 元々基本的に、 あたしは晴にぃ以外の男に幻滅してるし、何の期待も希望も持ってはいないから、木下のことなど、どうでもいいのだけど。 美咲が絡んでくると、無視もできない。 あたしの心のオアシスである美咲を、からかい半分でいじるのは、我慢ならない。 そう、男なんて、大抵同じ。 木下も、 ママの旦那も、 親戚の叔父さんも、 学校の先生もみんな…。 「蒼子?」 美咲が、小声であたしの名を呼ぶ。 「顔色悪いみたい、大丈夫?気分よくないの?」 心配してくれる美咲の優しい声が心地よい。 嫌なことを、思いだしかけたあたしの思考を、美咲は止めてくれた。 何か言ったわけでもない、 ただ隣にいるだけなのに、 あたしをいつも助けてくれる。 美咲は、かけがえのない友達。 親友と呼んでもいい。 それなのに。 あたしは、心の深い部分に、誰も受け入れられないと警戒する気持ちが常にあった。
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4176人が本棚に入れています
本棚に追加