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あたしは初対面の頃から、この男のことなど眼中になかったし、できればかかわり合いになりたくないと思っていた。
なぜなら木下というやつは、見た目も行動も言葉も何もかもが軽くて、信用できなかったから。
それに、だいたいあたしは晴にぃ以外のひとに、興味はない。
だから、告白されたその場で、きっぱりと断った。
そしたら木下は何を思ったのか、
今度は美咲を口説き出した。
こっちが駄目ならあっち。
そんな軽い木下の言動に、あたしは更に幻滅した。
元々基本的に、
あたしは晴にぃ以外の男に幻滅してるし、何の期待も希望も持ってはいないから、木下のことなど、どうでもいいのだけど。
美咲が絡んでくると、無視もできない。
あたしの心のオアシスである美咲を、からかい半分でいじるのは、我慢ならない。
そう、男なんて、大抵同じ。
木下も、
ママの旦那も、
親戚の叔父さんも、
学校の先生もみんな…。
「蒼子?」
美咲が、小声であたしの名を呼ぶ。
「顔色悪いみたい、大丈夫?気分よくないの?」
心配してくれる美咲の優しい声が心地よい。
嫌なことを、思いだしかけたあたしの思考を、美咲は止めてくれた。
何か言ったわけでもない、
ただ隣にいるだけなのに、
あたしをいつも助けてくれる。
美咲は、かけがえのない友達。
親友と呼んでもいい。
それなのに。
あたしは、心の深い部分に、誰も受け入れられないと警戒する気持ちが常にあった。
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