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あたしは、晴にぃとの結婚話を伯母から聞かされた時に、
あまりにあっさり伯母の言葉を受け入れた晴にぃの本心を少しでも知りたくて、
晴にぃには内緒で、別の日に、伯母とふたりであった。
晴にぃの知らないところで、晴にぃのことを聞くことにためらいがなかったわけではないけれど、
でも、どうしても気になる気持ちを抑えられなかった。
あたしは勇気を出して、
単刀直入に、トウコという人を知っているか、伯母に訊ねた。
緊張からか、言葉が震えた。
伯母は、あたしをいつものように、少し冷ややかな瞳で見つめ、
それから、ゆっくり語りだした。
トウコさんが、晴にぃの幼なじみで、初恋のひとであること。
その恋は実らず、
晴にぃは想いを引きずって今まで生きてきたこと。
その想いを、やりすごすためだろう、淡白な体だけの関係の女性が、晴にぃには何人かいること。
あたしは、晴にぃの、知られざる男の部分に衝撃を受けた。
男に幻滅してきたあたしなら、
愛のない性交を繰り返す晴にぃに嫌悪感を抱いてもおかしくないのに。
あたしは、どんな話を聞いても、あたしの中の晴にぃを信じる部分が揺るがないことに、自分自身おどろいていた。
伯母の話に戸惑いや驚愕を感じつつ、
あたしはトウコさんの情報を得た。
トウコさんが、仕事を生かし、料理の本を出していることとか、
晴にぃの友達とお付き合いをしていることまで、
伯母は、調べたのかと思うぐらいに、詳しく晴にぃの交遊関係まで、把握していた。
「晴生はずっと、抜け出せないトンネルの中を漂ってるみたいなもんなんだよ。
でも、蒼子なら、そんな晴生の道しるべになれる。
お前の存在が、あの子の未来に光を与えるんだよ。」
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