蒼子~その②

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まるで、あたしと晴にぃの未来が見えてでもいるかのように、きっぱりとそう言い切る伯母の言葉に、あたしは身を委ねた。 晴にぃの側に、ずっといられるのなら、なんだってよかった。 身代わりでも、道しるべでも、あたしには同じこと。 晴にぃの心まで欲しいなんて、そんなおこがましくてずうずうしいこと、最初から望んでなどいない。 だってあたしは、 不完全な人間だから。 真正面から、晴にぃにぶつかっていけるほど、純粋でもない。 晴にぃの心が別の女性にあると知っていながら、 そ知らぬ顔で結婚するような、そんな打算的で狡い女なのだ。 伯母と会った喫茶店を出た後、 あたしはすぐに、本屋に寄った。 料理本のコーナーに、 トウコさんの名が、大きく宣伝されていた。 [地元から生まれたカリスマ料理人―トウコ―] 苗字のない、カタカナの名前のみのシンプルさが、目をひいた。 季節の野菜を使った、家庭料理の本。 果物メインの、スイーツの本。 それから、彼とのふたり暮らし用、ブランチメニューの本。 あたしは、何冊かあったトウコさんの本の中から、この3冊を手に取り、レジに向かった。 ドキドキした。 悪いことをしているわけじゃない。 でも、晴にぃの探られたくない世界に勝手に足を踏み入れたような、そんな背徳感みたいなものがあたしの体を駆け巡る。 晴にぃが愛した女性を理解したい。 どんな女性であれば、 晴にぃから愛されるのか。 その時のあたしは、そんな考えに囚われていた。
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