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「怒ったの…?」
俺の体を跨ぐようにして、俺の顔を覗き込んだ蒼子(ソウコ)が、珍しく、表情を微かに崩す。
蒼子の身に付けている薄い下着など無いに等しいぐらいに、彼女の素肌が、ダイレクトに俺のむき出しの背中に当り、俺はいきり立ちそうな欲望を必死に堪えた。
「お前、年いくつになった。」
今日は蒼子の誕生日だった。
約束を実行するとふたりで決めた日にち。
「は…18?」
「俺の元にきたの、中学生の時だよな。」
「うん…そう。」
「お前は、簡単に男に体を許すほど、スれた女の子には見えなかった。」
そうだ。
伯母に、預かるように言われ、施設に迎えに行った時に初めて見た蒼子は、
固くなに周囲を拒み、人と目も合わせようとしなかった。
肌は全身蒼白く、
髪は真っ黒で腰まであるストレートで、白いワンピースを着て、ぼんやりと宙に目をやるその姿は、まるで、幽霊のようだった。
「施設では一年以上、誰とも口を利いていないと、お前、自分で言ってたんだぞ、忘れたのか。」
「うん…だから、それよりもっと前…。」
それより前じゃまるっきり子供じゃないか。
あり得ない。
「いいよ、またで。
お前の気持ちの準備がまだなら、俺は待つから。」
頭の中に、数学の公式を思い浮かべながら、俺は目を瞑った。
何か、他のことを考えていないと、暴走しそうだ。
いい大人の俺が、一回りも若く、しかも、3年間という長いとは言えない期間だが、一緒に暮らし大事に育ててきた女を無理矢理抱くわけにはいかない。
「嫌なわけじゃないんだよ…?」
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