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「そうだな…それじゃあ、ヤったことにしておくか。」
「え…?」
「だから、そんな不安そうな顔をするな。
籍入れたからって、お前の気持ちを無視して、しようなんて俺はこれっぽっちも思ってないから。」
「本当…?」
蒼子の表情が少し柔らかくなる。
「こういうことは、お互い納得した上で…じゃないとな。」
「でも、あたし…。」
また、蒼子の眉が、ぴくりと動き、何かを懸念していることがわかる。
「晴にぃが、他のひとと…エッチなことするのは、嫌…。」
「わかってる。しないよ。」
俺が即答で、断念すると、
こっちがびっくりするほど嬉しそうに、蒼子は頬を緩ませた。
白い肌が、ピンク色に染まる。
「よかったぁ。」
蒼子の瞳が潤む。
「晴にぃとちゃんと夫婦になれるように、努力するから。
もう少しだけ、時間ちょうだい。」
蒼子の全身から、心底ホッとしたことが、空気を伝って俺に届く。
「よかった。」
もう一度、そう呟き、それから蒼子は、俺に寄り添うように、体を横たえた。
背中に、さっきよりもはっきりと、蒼子の温もりを感じた。
正直なところ、抱いてしまいたかった。
蒼子に感じている気持ちがなんなのか、
抱いたら、蒼子の全てを受け入れたら、わかる気がしていた。
いつからだろう。
ずっと子供だと思っていた蒼子を、"女"として意識するようになったのは。
蒼子を預かった当初、平気で添い寝だって出来たのに。
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