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いきなり父さまが、私に縁談話を持ってきた。
「嫌です。私はまだ婿取りなど、したくありません。それに、その方にはすでに北の方がいらっしゃるではありませんか。あちこちにも大勢、妻がいます。私は、浮気な方は嫌いです。」
父さまは、太政官で参議を勤めている。いわゆる中流貴族だ。
その上司である大納言、藤原済時(なりとき)さまから話が持ち上がったようだ。済時さまの子、実方(さねかた)さまとだ。
「じゃが、由宇や。実方どのは、将来が有望な方じゃ。それに、朝廷内ではかの在原業平再来かと言うほどの美男子じゃ。」
父さまは私をその気にさせようと、続けて言った。
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