縁談

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こうと言い出したら父さまは、聞く耳を持たない。 嫌だけれど、父さま・吉野はすっかり乗り気で、しかも母さまやお家の安泰の事まで持ち出されると、否とは言えない。貴族の姫に生まれた者の、定めなのだ。 「分かりました。父さまのお言い付け通り実方さまとのご縁、お受け致します。」 「そうか、聞き分けてくれたか。さすが、由宇じゃ。ちと、淋しいがいた仕方あるまいて。ははは。」 「ほほほ。」 父さまが、大きな声で笑っている。吉野も嬉しそうだ。 「ではさっそく、済時さまに返事の文を書くとしよう。」 父さまはそう言いながら、弾むような足取りで部屋を出て行った。 だけど朝廷内では美男子と言われてるみたいだが、どの様なお方なのだろう。 「ねぇ、吉野。実方さまはどの様なお方かしら?」 「噂では、和歌や楽器に秀でておられるとか。なんでも、笛の音は誰しも聞き入ってしまうそうで。」 ただの浮気な方では、無さそうだ。
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