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その日の夕方、早速文が来た。
とても良い香りのする薄紫の薄様(うすよう)に、桜の小枝が添えてある。私が桜が好きだと、父さまに聞いたのだろう。
~かくとだに えはや伊吹のさしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを~
この様に恋い慕っていると、言う事すら出来ないのだから、伊吹山のさしも草の様に焦がれている胸中を、決してご存じないでしょう。
私の気持ちは、すべてこの歌に詠みました。貴方が決心してとても嬉しいです。
「まぁ、なんて情熱的な歌でしょう。それにとても、お手蹟(て)がお上手ですわ。そう思いませんか?姫さま。」
今まで幾つも恋文を貰ったことがあるが、皆技巧過ぎていかにも代筆っぽく、甚だ嫌気がさしていた。
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