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亰車
ミヤコグルマと
昔
勝が教えてくれた
中は蜘蛛の巣が張り巡らされ
埃が積もっている
そこに
明らかに
人が一人歩いたあと
足跡が
一つ 一つ
目で追うと
部屋に向かっている
昔の
私と藍の部屋にむかって
足跡は続く
勝だろう
つい先程まで
ここに勝がいた
足跡を辿る
足跡を踏んで
歩いた
ただそれだけで
私の胸はいっぱいになった
勝と同じ所を
同じように歩く
いつも隣り合わせで
私の儚い
だれもかれもを助けたい
と
雲をつかむような夢を
勝は本気で信じてくれた
私が親を失って
挫けそうなときは
不器用な彼は
不器用に立ち上がらせてくれた
部屋の扉を開ける
ベッドと机
あとタンスがあるだけ
不思議と部屋には
埃が一つもない
電球が光る
部屋は明るい
これも勝の気遣いなのかな
机のうえに
一つ、封筒がおかれている
なかから
丁寧な字で書かれた
三枚の手紙が表れた
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