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辺りに人の気配はなく、水を打ったように静かである。
少年の足音さえも、全て闇にかき消されていく。
さっきまで痛いくらい感じていた手足の冷たさは、すでに痺れへと変わっている。
"ここは一体どこなんだ――…歩いても歩いても何もないじゃんか。"
心の中でぼやきながら、石のような手を擦り合わせる。
一瞬感じた温もりは、あっという間に元の冷たさに戻った。
少年はまた立ち止まり、今度はしゃがみこんで手を下に伸ばした。
…が、そこにはやはり何もなかった。その手は少年の足のずっと下で、空を掴む。
恐る恐る立ち上がり、足を前に出す。
冷たく平らなものがある。今まで歩き続けてきた地面の感触。
冷たい。
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