第一章 MASURAO

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次の日、僕が会社で月面宙返りを披露していると、ハゲの部長がつっかかってきた。 「益荒男くん。君は毎日毎日ふざけすぎではないか? 会社は遊びにくるところではない。 君も社会人なら自覚したまえ。 あと昨日から私の財布が見当たらないのだが。」 「なにぃ~~! 部長! もう一度言ってみろ!」 「私の財布が」 部長が言い終わらぬうちに僕の必殺の拳が部長の腹にめり込んだ。 「くっふぅーーーーー!」 「言葉には気をつけろよ、風に舞うちん毛みたいな頭しやがって…」 僕がとどめを刺そうとしたとき、アナスイが割って入った。 「ちょっと待った(笑)、ちょっと待った(笑)。 益荒男、そのへんにしとけ。」 僕はアナスイを睨みつけた。 「アナスイ…なぜ止める? お前はこいつが憎くないか?こいつさえいなければお前の家族は……」 「俺の家族はみんな元気だ。 それより聞けよ、部長は確かにハゲで偉そうだが部長には3歳になる娘さんがいるんだ…。」 「この野郎!自分の娘にまで手を出したのか!」 僕は部長の残り少ない頭髪をむしり取った。 「最後まで聞け! 部長はお前が思ってるような人間じゃないんだ。 まぁ落ち着けよ。」 「しかしこいつは…ハゲて」 「確かに部長はハゲだ。しかしなぜハゲたと思う?」 「なぜ…?」 「益荒男…お前がことあるごとに部長の髪をむしり取ったからなんだよ…。」 「な、なんだって、そうだったのか…部長。 部長…あんたはそれを隠して……。」 部長は膝の埃を払いながら立ち上がった。 「ふ……気にするな。益荒男くん。 部下の面倒を見るのが上司の役目じゃないか。」 「部長………!」 部長は僕の肩に手を置くと、にこりと笑った。 「君はクビだよ。」
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