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次の日、僕が会社で月面宙返りを披露していると、ハゲの部長がつっかかってきた。
「益荒男くん。君は毎日毎日ふざけすぎではないか?
会社は遊びにくるところではない。
君も社会人なら自覚したまえ。
あと昨日から私の財布が見当たらないのだが。」
「なにぃ~~!
部長!
もう一度言ってみろ!」
「私の財布が」
部長が言い終わらぬうちに僕の必殺の拳が部長の腹にめり込んだ。
「くっふぅーーーーー!」
「言葉には気をつけろよ、風に舞うちん毛みたいな頭しやがって…」
僕がとどめを刺そうとしたとき、アナスイが割って入った。
「ちょっと待った(笑)、ちょっと待った(笑)。
益荒男、そのへんにしとけ。」
僕はアナスイを睨みつけた。
「アナスイ…なぜ止める?
お前はこいつが憎くないか?こいつさえいなければお前の家族は……」
「俺の家族はみんな元気だ。
それより聞けよ、部長は確かにハゲで偉そうだが部長には3歳になる娘さんがいるんだ…。」
「この野郎!自分の娘にまで手を出したのか!」
僕は部長の残り少ない頭髪をむしり取った。
「最後まで聞け!
部長はお前が思ってるような人間じゃないんだ。
まぁ落ち着けよ。」
「しかしこいつは…ハゲて」
「確かに部長はハゲだ。しかしなぜハゲたと思う?」
「なぜ…?」
「益荒男…お前がことあるごとに部長の髪をむしり取ったからなんだよ…。」
「な、なんだって、そうだったのか…部長。
部長…あんたはそれを隠して……。」
部長は膝の埃を払いながら立ち上がった。
「ふ……気にするな。益荒男くん。
部下の面倒を見るのが上司の役目じゃないか。」
「部長………!」
部長は僕の肩に手を置くと、にこりと笑った。
「君はクビだよ。」
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