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第1章・散りゆくもの
「もっと気持ち、伝えて欲しかった。もっと好きって言って欲しかった。もっと心の中を表現して欲しかった。
何も言わなかったら、何も表現しなかったら、何も分からないよ。何も伝わらないよ。今までありがとう。さよなら。」
何故だろう。人は失って
改めてその大切さに気付く。
二人には少し狭い部屋を出て行こうとする君の後ろ姿に僕は言った。
「ユイナ、ちょっと待ってよ。ねぇ、ユイナ。」
「もう、遅いよ。」
振り返りもせず、目も、顔すら見ずに、君は僕に言った。
君は今まで一度だって文句のひとつも言わなかった。ケンカもひとつも起こらなかった。
そんな君が頑張って、一生懸命出した言葉。そんな言葉だったから、君の一つ一つの言葉が僕の心に突き刺さった。
家具もある。テレビもある。冷蔵庫もテーブルもカーテンも。全部あるはずなのに、でも今この部屋にない。さっきまであったものが。大切なものが確実に。
さっきより部屋が広く感じる。
好きな、大好きなユイナが僕から離れていく。その距離は少しずつ確実に。何メートルしかない距離が、すごく遠く感じる。
このままじゃいけ
「ユイナ、本当に大好きだった。今までありがとう。そして、さよなら・・・。」
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