第2章・出会い

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「えー、ですから、その思いを持ち続けてですね…」 もうざっと20分は経っただろうか。校長の眠たい話が続く。明らかに誰もちゃんと聞いているようには思えないし、見えない。 新しい学校、新しいクラス、新しい学園生活、周りの人は浮かれに浮かれているが、僕には関係なく、ただ今まで通りになるだろうし、するだろう。 高校の入学式、中学からの友達も居ない、クラスで誰と話す訳でもない、ホームルームが終わってすぐ帰る。めんどくさいのは嫌い、特に作り笑いとかは。 帰り道にもたくさんの人が戯れている。何がそんなに楽しいんだろう? 帰っている途中、校門に大きな桜の木があった。 「なんて綺麗なんだ。心が安らぐ、癒される。」 なんて僕が思う訳もなく、あってもなくてもどうせ見ない。 僕は友達に何度も言われた事がある。 「ハルトって感情ないし、冷たいよね。」って。 そのおかげでみんなからは「アイス」ってあだ名で呼ばれてた。冷たいからアイス。 別にそんな事ないと僕は思う。ただみんなと比べるから、多数決で多い方と比べるから違うとか変わってるとか言う。 確かに今まで何かに興味を持った事はない、でもそれは興味の沸くものに出会ってないだけ、それに出会うのが早いか遅いかただそれだけ。 「人がどうだから自分はどう」そんな事ばっかり気にするこの日々、この世間、この世界にうんざりする。 僕は僕だ。 そんな事をいつものように考えながら桜の木を通り過ぎる。 通り過ぎようとすると、その木の下に女の子がそれを見上げていた。 辺りはまだ友達と賑やかにしているのにその子は一人で。そんな姿を見て、僕はその子に共感するものがあったというか、親しみを覚えた。 僕と一緒だ。 「何してるの?」 気が付くと僕はその子に声をかけていた。そんな事した事なかったのに、そんな事をする自分自身に驚いた。 女の子はゆっくりこっちを見た、その瞬間、僕はそれ以上に驚いた。  
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