僕を仮に町娘Aとして。

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薬品のニオイのする部屋、硬いベッド、冬にはストーブが置かれる保健室。 せんせえの白衣は洗剤の匂いがする。 あまり好きな匂いではないけどね。 貴方は僕より皆と仲が良い。 僕なんかよりずっと仲が良い。 「嫉妬」 馬鹿みたい。 本当、馬鹿みたい。 彼のそれは売り物なのだ。 誰に対しても平等に、同額で提供された商品なのだ。 僕だって分かっている。 所詮売り物の優しさだと、居心地の良さだと分かっている。 だからこそ僕は彼のそれを買う。 代償は─払えているのだろうか? “ツケ”で買ったその安らぎ。 もしかしたら、僕という存在は代償どころか迷惑かもしれない。 それでも、僕は貴方のその売り物に惹かれる。 嗚呼、本当の馬鹿だと笑ってくれ。嘲けてくれ。 僕は、彼の物語の中にきっと登場するだろう。 多分、客として。 数えるのも馬鹿馬鹿しい程の客の一人としてきっと登場するのだ。 勿論一頁にも満たぬ登場シーン。 しかし、きっと貴女は僕の物語にしっかりと登場する(僕の物語が仮にあったとして)だろう。なんたって、僕が贔屓にする商人だ。 それはもう何ページも埋めてしまうことだろう。 嗚呼、この、差。 所詮は僕の妄想ではないか、と仰る方もいらっしゃるでしょうが残念ながら事実であるのです。 love、like。 それらの違いは肉体関係にある。 多分、否。 僕はさぁ、せんせえを愛してるよ? 「貴方」という売り物をこよなく愛している。
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