僕を仮に町娘Aとして。

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しかしながら、それは片想いにも満たぬ、僕があのハンス・ベルメールの美しい性が顕わにされた作品を愛するような、そのような感覚であるのです。 妖しき商人は愛している、 何を? ─We are. me? 烏滸がましいにも程がある。 そう、商人を思うコレは実にベルメールの作品を思うソレに酷似しているのだ。 醜い、儚い独占欲が僕を掻き回す。 “ソレら”は人々に平等に披露されるものであり況してや僕だけのモノだなんてあり得ない。 僕のサディズム的な私欲が僕は嫌いだ。 手に届かない。 触れることさえおそれ多い。 口にその名を出す事さえ躊躇う。 神聖な聖域。 嗚呼、僕は誰にも望まない。 嗚呼、絶望などしない。 「我慢は好きよ?」 マゾヒストが顔を覗かせる。 厭らしくつり上がった口角のなんと憎たらしいことか。 とてもとても近くて、気が遠く成る程遠い。 貴方は目の前にいて、彼女の目の前にもいて、きっと彼の目の前にもいる。 公共の“モノ”なのだ。 「ねぇ、」 と言えば応えてくれるし、 「そうでしょう?」 と問えば頷いてくれる。 なんと素晴らしいプログラム。 誰も僕になんか興味ないのさ。 虚しくなんかないよ。 ほら、我慢は好きだから。 さっきマゾヒズムさんが言ったじゃない。 likeにもloveにも満たない欲が大きすぎて困る。 僕は、貴方の何になりたいのか、分からない。 ただのお客様、だなんて、素敵過ぎて吐堵がでるわ。
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