第一章 生還

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季節は秋………… 大地に豊かな実りを与える季節、山々は紅葉に色付き始め綺麗な色彩で旅人の心を癒やす。 しかし反面、動物達は冬眠に向けて栄養を蓄える季節でもある。 そのため山は美しさの中に危険をはらませる季節でもあった。 王巍の虎口を脱し、牙竜山脈から平北を目指す詩鳴の一行。 鴉と海炎の兵士に守られて無事に麓へ辿り着き、森の木陰で暫しの休息を取っていた。 現在地は京洛と鳳英が接する国境付近の麓、近くに小さな村があったが敢えて人目を避け、森の木陰で休息する事にしたのである。 それは詩鳴が余計な混乱を嫌った事、そして平北国内では詩鳴が病に倒れているという噂を危惧した事が原因であった。 稲穂が辺り一面を黄金色に染め上げ吹き抜ける風に揺れている、森の側を流れる川は日の光を反射してキラキラと輝いていた。 現在地から平北首都 開峰安までは一行の足で20日ほどの距離、いよいよ詩鳴の帰還が近付いていたのである。 木陰の岩に腰を下ろし、ニーナの料理に舌鼓を打つ一行。 野鳥の肉、木々に実る果物、山で採れた茸に山菜、川で採れた魚など、食卓には自然の実りを堪能できる料理が並んでいた。 皆 笑顔で料理を頬張り歓談している。 ニーナはそんな光景に微笑み、更に料理の腕を振るっていた。 しかし一人、海浬だけは むくれ顔をしていた。 その訳は茸と山菜である。 兄 海炎が甘やかした事もあり、海浬は肉を好んで野菜を嫌う好き嫌いの激しい子として育ってしまった。 そのため嫌いな野菜は頑として受け付けず、一切 口にしようとしなかったのである。
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