第七章 相対する麒麟

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典禁は隠しもせず堂々と打ち明けた。 その言葉には一切嘘偽りは無い。 すると思わぬ出身地に詩鳴はもっともな疑問を呈した。 詩鳴「王巍の出身ですか?ではなぜ星影に仕えなかったのです?」 その問いに典禁は顔を軽く伏せ、ばつの悪そうに表情を曇らせた。 典禁「実は…京洛に使える以前、私は王巍の竜王に仕えておりました」 詩鳴「なんと……」 思わぬ返答に驚く詩鳴。 しかし表情は微動だにせず、接する姿勢も凛としたままである。 すると典禁は苦々しい口調で言った。 典禁「王巍の竜王は自尊心が強く、下級官吏の意見など聞き入れません。私はそんな王巍に見切りをつけて京洛に身を寄せたのです」 典禁は憤りで身を震わせると、伏せた顔を上げて詩鳴を見た。 典禁「しかし清盛が反乱を起こして私は左腕を失いました。ですが幸いにも雅継様に一命を救われ、御恩に報いるため身を捧げる誓いを立てたのです!」 典禁の真剣な瞳は詩鳴の瞳を真っ直ぐに見据えた。 詩鳴(なんと真っ直ぐな瞳なのか……) 典禁の瞳に詩鳴は感嘆の念を抱いた。 雅継を慕う気持ちは本物だけに瞳には一片の曇りすらない。
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