第七章 相対する麒麟

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詩鳴は典禁の素性を探るため質問した。 流星の言葉が胸に引っかかり、一抹の不安を感じていたからである。 しかし典禁は嘘偽りなく返答した。 法信の部下であり、埋伏の毒である事を隠しながら。 そして雅継を慕う気持ちを前面に出しながら。 詩鳴「そうでしたか、辛い思いを受けたのですね」 詩鳴は悲しげな表情を浮かべた。 人物を見抜く目に優れた詩鳴である。 それだけに曇り無き瞳を見て典禁という人物を認識した。 しばし沈黙して向き合う二人。 互いに言葉を発する機会を失い、部屋を静寂が支配している。 すると茶釜から湯が沸騰する音が聞こえてきた。 典禁「湯が沸いたようです」 典禁は椅子から立ち上がるとヒシャクを持ち、茶釜から湯を水差しに移した。 煮えた湯が水差しから温かな湯気を立てている。 そして隻腕ながら典禁は慣れた手つきで茶器を整えた。 典禁「極上の茶葉が手に入りました。どうぞ御覧下さい」 茶葉を器に移して詩鳴に差し出した。 確かに色艶といい香りといい極上の茶葉である。 詩鳴が茶葉を吟味していると、典禁は茶器に湯を注いで温めだした。
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