第七章 相対する麒麟

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典禁「この茶葉は村を出る際に母が持たせてくれた物でした。今では幻の茶葉と言えましょう」 事情を知り、また茶葉に込められた母の愛情を知り、詩鳴は驚いて言った。 詩鳴「そのような大切な茶葉をなぜ使ったのです?掛け替えのない大切な品ではありませんか」 人の情愛を尊重する詩鳴だけに動揺は激しい。 すると典禁は動揺を見透かしたように話を切り出した。 典禁「茶葉を使ったのには理由があります。それは詩鳴様に私の立場を解って欲しかったからなのです」 詩鳴「どういう事です?」 まるで懇願するような素振りの典禁に詩鳴は怪訝な表情を浮かべた。 典禁「これを御覧下さい」 典禁は懐から書状を取り出して詩鳴に差し出した。 詩鳴は書状を開いて目を通している。 すると詩鳴は驚愕の色を浮かべ、手を震わせながら典禁を見た。 詩鳴「これは…星影からの書状ではありませんか。なぜ貴方がこれを?」 内容にも驚いたが、典禁から出た事にも驚いている。 すると典禁は地にひざまずき、頭を下げて陳謝した。 典禁「申し訳ありません。星影に母を殺すと脅され、このような手段で詩鳴様に書状を渡せと言われました」
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