第七章 相対する麒麟

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平身低頭して詫びる典禁を詩鳴は黙って見るばかりである。 それもそのはず、詩鳴の胸中は激しい困惑で満たされていたからである。 手紙には「ミシェルを捕らえていること。智国を共同にて攻め、平北は先陣を切ること。その見返りにミシェルを解放すること。そして即決即断せねばミシェルの命は保証しかねること」それら様々な条件が記されていた。 詩鳴はミシェルが智国に捕らえられていると思っていただけに衝撃が大きいらしい。 テーブルに肩肘をついて体を支え、興奮からか額に汗を滲ませている。 すると上手くいったとほくそ笑む典禁は追い討ちとばかりに進言した。 典禁「王巍の使者は出立の準備を整え、今にも帰国する構えを見せています。速やかな決断をせねば王妃様に害が及ぶやもしれません」 急きたてる典禁に詩鳴は焦りの色を濃くした。 しかし厳しい表情で思い悩み、なかなか決断できずにいる。 自信家の星影が小細工を弄したのである。 それほど王巍の国力は疲弊している証である。 それだけに今なら王巍を討つ好機に違いない。 そうなれば天下統一が早まり、戦火の終息も早まるだろう。 しかしミシェルは詩鳴が心から愛した女性である。
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