第七章 相対する麒麟

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ミシェルを愛する詩鳴である、それだけに必ず承諾すると疑わなかったからである。 しかし詩鳴とミシェルの絆は星影や法信、典禁の予想を遥かに超えた崇高なものだった。 自分の事より人のため、それが詩鳴とミシェルの根底に深く根付いていたのである。 典禁(なんたる事か……) こうなると逆に典禁が追い込まれる立場となった。 このままでは目論見が水の泡となり、積み重ねた苦労が台無しになるからである。 見れば詩鳴の表情は決然としており、撤回する事は不可能に思える。 典禁(こうなればイチかバチか……) 典禁は懐に忍ばせた小刀で詩鳴を殺害する事を考えた。 とはいえ詩鳴は剣術の達人である。 そのため文弱な典禁では歯が立たず、まともに殺り合うなど自殺行為だった。 すると詩鳴は気持ちを落ち着けるように茶をすすっている。 どうやら警戒している様子はない。 典禁(殺れる…!!) 油断している詩鳴ならば不意打ちで討てる可能性が高い。 典禁は気付かれぬようソッと懐に手を伸ばした。 詩鳴が杯を傾けた瞬間に斬りかかる構えである。 緊張で脈拍が早くなり、僅かな微動で鼓動が高鳴っていく。
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