第七章 相対する麒麟

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孔延「確かに今は王巍を討つ好機、連戦により国力、軍力ともに大きく消耗しています。しかし容易くは倒せないでしょう。なぜなら背後で狼が牙を剥き、虎視眈々と平北を狙っているからです」 背後の狼とは智王 時雨の事である。 詩鳴「わかっています。しかし王巍は強大です、今討たねば打倒する事は難しいでしょう」 決然として言う詩鳴、しかし僅かに断腸の念が混じっている。 すると詩鳴の心情を察してか、孔延は首を振って否定した。 孔延「確かに王巍は強大です、しかし北に平北、東に智、南には南蛮が割拠しています。しかも内には内乱と反乱が付きまとい、人民はエンサの声を上げています」 詩鳴「だからこそ王巍を討って人民を救わねばならないのです!」 王巍の惨状を目の当たりにしただけに詩鳴の声には憤りがこもっていた。 しかし孔延は極めて穏やかな口調で進言した。 孔延「お気持ちは理解しています。しかし平北と王巍が争えば時雨の思う壺、まんまと漁夫の利を得るでしょう。ゆえに今は智を先に討ち、北東一帯を手中にすべきと考えます」 まるで諭すように進言する孔延。 詩鳴も熱を冷まして頷いている。
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