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すると孔延は確信部に鋭く切り込んだ。
孔延「詩鳴様、王巍侵攻を決断なされたのはミシェル様を想ったがゆえではないですか?」
この言葉に初めて詩鳴は動揺の色を浮かべた。
孔延「やはり…そうでなければ納得がいきません」
詩鳴「孔延、この決断は……」
孔延は手の平を前に出して詩鳴の言葉を遮った。
臣下として無礼は重々承知の行動である。
しかし今遮らねば詩鳴の命令に従わざるを得ない。
孔延は経験と洞察力から素早くそう判断し、敢えて詩鳴の言葉を遮ったのだった。
機先を制され戸惑う詩鳴に孔延は極めて真剣な面持ちで進言した。
孔延「詩鳴様、自身の幸せを成せぬ者がどうして他人を、ましてや天下万民を幸せにできましょう?また主君に犠牲を強いたとなれば、我々臣下はどれほど無念か…なにとぞお察し下さい」
孔延の心底から発せられた魂の声は詩鳴の心底に強く響いた。
詩鳴「孔延…すまない……」
詩鳴は顔を伏せて身を震わせた。
思えば詩鳴は幼少に母を無くし、頼るべき父は腹違いの兄に殺されている。
しかし苦労の末にミシェルという良き伴侶を迎え、詩鳴はようやく心の支えを得たのである。
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