第九章 通い合う想い

42/53
前へ
/394ページ
次へ
流星「フフフッ、さすがに目ざといな。左様、その理由は三つ目の意味にある」 彩紋「三つ目の意味ですか?」 もはや思い当たらないのか、彩紋は思案せずに流星の言葉を待った。 流星は極めて真剣な口調で言った。 流星「今度の策を用いた要点はここにある。そして、それこそが詩鳴様のもっとも危惧された難点だ!」 途端に海炎の表情は陰(かげ)った。 なにやら思い当たる節が有ったのだろう、冴えない顔で奥歯を噛み締めている。 その微細な変化を感じ取った流星は冷静な口調で続けた。 流星「お前達は王巍領内で詩鳴様に忠誠を誓った。しかし、それは苦境を脱する手段という思慮が有ったに過ぎん」 海炎は腹蔵を突かれたように嘆息した。 そして流星を見据えて胸の内を打ち明けた。 海炎「仰る通りです、確かに初めは苦境を脱する手段と考えていました。王巍を抜け出せば恩を返して消え去る腹積もりだったのです」 これに彩紋達も表情を陰らせた。 しかし流星は平静として海炎を見据えている。 その表情には怒りや侮蔑といった感情は微塵も無い。 ただただ海炎を観察するように見ているようである。
/394ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1013人が本棚に入れています
本棚に追加