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それだけに流星は【平時にて乱を忘れず】という教えを心魂に徹する詩鳴に感嘆したのだった。
流星は幕舎を出る間際、ふとある事を思い出した。
そして詩鳴に向き直って問うた。
流星「詩鳴様、一つお伺いして宜しいですか?」
詩鳴「何でしょう?」
珍しく問う流星に詩鳴は意外そうな顔を見せた。
流星「海炎の事です。あの時、詩鳴様は確実に海炎を斬りつけました。なぜ海炎は絶命せず、全く刃傷を負わなかったのですか?」
すると詩鳴は「そういう事か」と言わんばかりに笑みを浮かべた。
詩鳴「フフフッ…そうですか、さすがに流星も気付かなかったようですね」
そう言うと詩鳴は辺りを見回した。
そして流星の持つ羽扇に目を止めた。
詩鳴「その羽扇を貸して下さい」
流星「羽扇をですか?」
流星は不思議そうに羽扇を手渡した。
すると詩鳴は椅子から立ち上がると羽扇を流星に突き付けた。
詩鳴「動かないで下さい」
そう言うと詩鳴は羽扇を高々と掲げた。
当然ながら流星の視線は羽扇に釘付けである。
詩鳴「ハァッ!!」
突然、詩鳴は流星に羽扇を振り下ろした。
左肩から右脇腹へ、海炎と全く同じ軌道に沿ってである。
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