第九章 通い合う想い

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流星が気付いた事を確認した詩鳴は羽扇を振り下ろした。 先ほどと全く同じ軌道を通って振り下ろしたのである。 しかし今度は全く身を斬り裂かれる感覚を受けなかった。 そして詩鳴は振り下ろした姿勢のまま流星に訊ねた。 詩鳴「いかがですか?」 流星は狼狽える事なく冷静に状況を分析した。 しかし特に変わった様子は見受けられない。 そして探るような目つきで詩鳴を見ると、ふとある事に気付いた。 羽扇を短く持っていた手が何時の間にか深く握り変わっていたのである。 これに流星は怪訝な面持ちで訊ねた。 流星「詩鳴様、これは…?」 気付いた流星に詩鳴は頷いた。 そして姿勢を崩して直立すると羽扇を巧みに握り変えて見せた。 詩鳴「左様、羽扇の握り手を瞬時に変えたのです。ですが、それだけではありません」 その言葉に流星は難解そうに唸った。 それは最大の疑問である【斬り裂かれた感覚】が解明できないからである。 すると詩鳴は悩む流星の胸元に羽扇を突き付けた。 流星「詩鳴様?」 流星は意図が解らず眉間にシワを寄せている。 しかし次の瞬間、流星の表情は恐怖へと変貌した。
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