第九章 通い合う想い

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流星は特に腐る様子も無く平然としている。 しかし詩鳴は流星の負けず嫌いな一面を知っているため、胸中で悔しがっている事を見抜いていた。 とはいえ心情を逆撫でするような詩鳴ではない。 そのため流星の求めに素直に応じた。 詩鳴「この羽扇を良く見て下さい」 詩鳴は再び流星の胸元に羽扇を突き付けた。 流星「……?」 しかし何ら変わった様子も無く、刃のような感覚は一切ない。 すると詩鳴は一息吐くと握り手に精神を集中した。 流星「なっ!?」 流星は驚愕した。 なぜなら羽扇にオーラが宿り、刃のような感覚を受けたからである。 流星「詩鳴様、これは一体!?」 驚く流星に詩鳴は微笑んだ。 すると途端に羽扇から刃のような感覚が消えたのである。 この不思議な現象に流星は戸惑いを隠せず、詩鳴は冷静な口調で答えた。 詩鳴「貴方が感じたものは氣です」 流星「氣?」 流星は眉間にシワを寄せて不思議そうな表情を浮かべた。 詩鳴「左様、氣とは武芸の修練を積み、心技体を磨き上げる事で会得できる奥義です。そして先ほどの現象は剣身一体となり、氣を発する事で初めてなせる業なのです」
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