第九章 通い合う想い

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武芸の心得がない流星だが氣についての知識は修得していた。 そのため詩鳴の言わんとする事がなんとなく頭で理解できたのである。 詩鳴は思い起こすように言った。 詩鳴「師匠は私に言いました、【心、技、体、氣、無】を磨き上げ、己の力として還元する事が無限天心流の真髄だと」 流星「では詩鳴様の氣が刃のように感じて我が身を?」 流星の訊ねに詩鳴は頷いた。 詩鳴「その通り、つまり海炎も同じ感覚を受けたに過ぎません。いや、覚悟していた分だけ生々しい感覚だったに違いないでしょう」 詩鳴は流星に羽扇を返しつつ微笑んだ。 詩鳴「これが種明かしの全てです」 すると流星は羽扇を受け取ってニヤリと笑った。 流星「なるほど、納得しました。ワザと注目させるように剣を高く掲げたのは途中で握り手を変え、斬撃の踏み込みを浅くする事で距離感を錯覚させるためですね?」 詩鳴は肯定するように頷いた。 流星「更に氣を放ちつつ海炎の体スレスレを振り抜く。これで海炎と他の者は斬られたと感じました、が、しかし実際は空振ったに過ぎなかった訳ですね?」 詩鳴「ご名答、全ては皆の心理を逆手に取った小細工です」
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