第十章 星影の本性

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文字通り絶望の淵にいたのである。 だからこそ詩鳴の健在はミシェルに大きな希望となって闇を照らしたのだった。 するとミシェルは感慨深そうに言った。 ミシェル「詩鳴様が御健在で安堵いたしました…ですが私は捕らわれの身です。もし私が志を妨げる要因ならば喜んで身を捧げましょう」 ミシェルは自害の覚悟を示唆した。 それは苦難を受け続けたミシェルゆえの言葉だった。 思えばミシェルは智国の裏切りによって捕らわれ、成俊と30名の兵士を捕縛する人質に使われた。 そのため落城する羽目となり、防衛線を突破されて鳳英の大半を智国に奪われたのである。 更には智国の謀略の道具として使われ、今また平北を窮地に陥れている。 不運が重なったとはいえ耐え難い屈辱に違いなく、ミシェルの心中は察するに余りあった。 そのため、さすがの孔延も掛ける言葉が見つからない。 すると孔延はふと思い出し、懐から袱紗(ふくさ)を取り出した。 ミシェル「これは?」 孔延「詩鳴様からの預かり物です。必ずミシェル様に渡すよう言いつかりました」 ミシェルは袱紗を手に取ると封を開けた。 ミシェル「まあ…なんて素敵な……」
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