-壱章-~喪失の復讐者~

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「ここに呼ばれた理由は…話す必要は無いな」 「あぁ…」   ―俺は生徒指導室に置かれた簡素な椅子に座り、机を挟んで一人の教師と向かい合っていた   「昨日の夕方に他校の生徒と喧嘩、その上、相手に怪我を負わせたそうだな…」 「…あぁ」  この教師の名は神崎 輝(かみざき ひかる) 、俺のクラス担任であり生徒指導の教師だ   「ふむ…それでどちらが元凶なんだ?」 神崎が問いかける 「さぁな…興味の無い事なんて覚えてはいない」 「…それは困ったな、この件は情報が少なくてなぁ」 「…」 コイツには多少の揺さぶりに全く動じない   並の教師なら、もう既に怒り心頭、と言った所だろうか ―それ以前に、この学園に俺と関わる教師は神崎ぐらいだから知らないが…   「別に困らないだろうが…」 ポツリと呟いた 「何?それはどういう意―『コンコン』」 神崎の言葉はドアのノックに中断された 「誰だ?入りなさい」   「失礼します」 扉が開き、仕切りのカーテンに二つの影が映る シルエットからして、両方、女子生徒だろう 「お話中にすいません、何か言いたい事がある人が居て…」 左の影がそう言った 「ほら、行きなさい」後押しするような声がすると、右側の影が動き出した   ―カーテンの裏から、大きなリボンをした長髪のポニーテールの女子生徒が姿を表した 「…」 統夜はただ、黙っていた
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