序章1・停滞と躍進と独立

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時代の流れというものは激しく、美しく、素晴らしいが時として悲しみにも満ちている。 地球温暖化の影響により気象環境が劇的に変化したのは2043年のことであった。 90億を越えていた人類の総人口はわずか数年間で60億弱と半世紀前と同じほどとなり、2051年に水と食料をめぐり始まった第三次世界大戦により50億弱にまで減少した。 戦争は2055年になって終結したが、決定的な勝者も敗者もいなく、ただ人々に悲しみだけを残すのみであった… 戦争とは得てしてその様なものであるが、敗者という悪者がいなかったため、人々の怒りは行き場を失い、その後約半世紀間も大小多数の小競り合いが続いた…     “暗黒の時代” それは2043年以降から約70年間続いた時代であり当時の人々にとってはもちろん次世代の人々にとっても実感できるものであった。 気象環境の変化は数十年ほどで落ち着きを取り戻したが、戦乱というものはなかなかわずかなことでは収まるものではなかった… このような時代に転機をもたらしたのは2112年、アポロ計画以来の月への到達であった…
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