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わたしの同級生で幼なじみの竹田くんは、赤ちゃんや子供をあやすのがすごく上手い。
母親の腕の中で火のついたように泣き叫んでいた赤ん坊でさえ、
竹田くんが耳許で二言三言何か囁いただけで、パタリとおとなしくなってしまう。
ああいうのも一種の「才能」なのだろう。
けれどもある日、不幸なことが起きた。
竹田くんは親戚の赤ちゃんを預かって留守番をしていた。
ミルクをやり、おしめを替えてから、彼は得意の子守歌を歌って聴かせてあげた。
それを耳にしたらどんな赤ん坊だってコロリと寝ついてしまう、ちょっと魔法のような歌だ。
だけどその赤ちゃんは、それから二度と目を覚まさなかった。
乳幼児の原因不明の突然死。わりとあることだと聞く。決して竹田くんのせいではない。
親戚も我が子の死を深く悲しみこそすれ、
竹田くんのことを疑ったり責めたりなどしなかった。
でも竹田くんはそれからおかしくなった。
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