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「セーフセーフ……ふぅ」
「いや、遅刻だから。チャイムとっくになってるぞ?」
「先生! これはれっきとした理由があるので遅刻してません!」
「ほう、理由とな」
また始まった……。
祐二は遅刻の常習犯だ。そして遅刻する度に理由を言って遅刻を取り消してもらえるように努めている。
これは既に1―Aの朝ホームの見せ物と化している。
祐二の理由はとてつもなくくだらない理由である。それがクラスでウケたら遅刻の取り消しとなっている。これはクラスの暗黙の決定とされ、担任もこれを黙認している。祐二、お前このクラスの担任があの人でよかったな。いや、マジで。
「はい。実は道中で肩をぶつかってしまったマッチョに謝って、話をしてたらそいつすげーいい奴だったんです」
「ほぅ……」
「んで、話が盛り上がって二人でやることにしたんです」
「何を?」
「筋肉さんがこむらがえったです!」
「ぶっ……!?」
こいつ、ネタのチョイスが突発的すぎる!! クラスのみんなはケラケラ笑っていたが、俺は思いっきり吹き出してしまった。 まずマッチョという所で赤いシャツのインナーに学ランを羽織り、赤いバンダナを額に巻いてる大男が浮かんできた俺はもう末期なんだろうな……。
とりあえず担任もさぞ楽しそうに笑っていたから、遅刻は取り消されたんだろう。勝ち誇った顔で俺の前の席に座る。
あー、そう言えばこいつ俺の前の席だったな。ボーっとしてて忘れてた。
「よう、おはよっ」
「おはよ……。今日も寝坊か?」
「いや、だから真人と筋肉さんがこむらがえったを「いや、もういいから」寝坊ですっ」
「よろしい」
祐二はイケメンだ。しかし、人生の汚点とも言えるものがある。本人は全く気にしていないが。
それは、オタクである! いや、ヲタクである!!
日常生活に色んなネタが飛び交うが決まってヲタク的なネタである。
周りのクラスメイト達はそんなの無縁な領域ではあるが、幼い頃から祐二とずっと遊んでいた俺は、遊ぶ度にヲタ的なものに触れさせられて過ごした為に多少の知識はあるわけだ。
祐二がネタを言う度に突っ込みたいが普通の人間としてはそこを抑えるべきだ、という葛藤を毎日繰り返している。まぁ、祐二が近くにいる場合には突っ込むんだけどな。
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