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「ほら見せなさい」
「あっ! 泥棒!」
「ええっと、なになに・・・・・・・・・・・・グハッ!」
「吐血!?」
クシャクシャの恋文をグシャグシャに握り締め、西条さんが地面に倒れた。
「大丈夫なの西条さん?! ──っていうかこの文面見て吐血って?!」
「な、なんてこと・・・・・・こんなことって」
「とりあえず返してってば」
「待ちなさい! あっ! 泥棒!」
「泥棒はそっちでしょ! まったく油断もスキもないんだから」
グシャグシャになった恋文をポケットに入れるボクを、西条さんがじっと見る。
「まだ何か?」
「あなた、その恋文を誰かに見せたりとか?」
「したよ」
「ゴハッ!」
「どうして西条さんが吐血するの?! 無関係でしょうに」
「そ、そうよね。でも本来はあなたが無関係のはずなんだけど・・・・・・」
「西条さんは面白いなあ」
「ものすごいバカにしてるでしょあなた!」
「それじゃ、ごきげんよう」
「ちょ、ちょっと! それどうするつもり!?」
「え? とりあえず持ち主の二通目を待つよ」
「二通目って──ちょっと夏神さん!」
すでにボクはその場から走り去っていた。
「な、なんてこと・・・・・・」
彼女が地面にへたり込んでいることなど、知りもせずに。
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