126人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっと話せた。いちいちボクに力を使うのやめてよね」
「やろうと思えば人前で脱げとも言えるが?」
「すみませんでした! どうか私に寛大な慈悲をお与えください!」
「ふん、最初から素直にそう言えばいいのだ」
「いつか羞恥のどん底に突き落としてやるんだから・・・・・・」
「何か言ったか?」
「いえ滅相も」
ボクはあさっての方を向く。
深咲ちゃんは将棋の駒をマス目に並べていた。
「で、今日は何か用なの?」
ボクは制服を着替えながら神様に用件を訊いてみた。
巫女装束の少女は長い髪をベッドに広げながら、スプリングの感触を楽しんでいた。
「ああ、私がいない間に東堂家に来たと聞いてな?」
ボクが神木を切り倒してしまったことにより、神様は家と呼べる場所を失ってしまった。
それからは東堂家で寝泊りしているらしい。
東堂家というのは旧家で、武道を重んじる家柄だった。
その家にボクの好きな人、東堂・要さんが住んでいるのだ。
「うん。でも神様が陽無月神社にいるって聞いて無駄足だったけどね」
陽無月神社というのは、この町で一番大きい神社で、祭りや初詣の名所にもなっている。
その神社には親友の陽無月・千歳が住んでいる。
彼女は生まれながらにして霊力があるらしく、子供の頃から霊などが見えたと聞いたことがある。
その当時のボクは半信半疑だったが、今なら彼女の言葉は信じられる。
何故ならボクもこうして見えるわけなのだから。
「それを聞いて仕方なく私が足を運んでやったのだ」
「そうだったの?」
クローゼットを閉めて、着替え終わったボクは椅子に座る。
最初のコメントを投稿しよう!