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東地区の高校に通う石塚・志乃はその日、悪夢を目の当たりにする。
「そ、そんな・・・・・・」
時刻は真夜中。
人々が寝静まった町のある場所で、志乃は呆然と立ち尽くしていた。
目の前に佇む明かりの無い建物。志乃はその建物に近づく。
知らない間に張られた立ち入り禁止のテープがその建物を囲んでいた。
テープを掻い潜り、建物を見上げ、
「どうして・・・・・・」
と呟く。
建物の三階部分には大穴が開き、外壁には幾つもの亀裂が走っている。
今にも崩落しそうなその建物の中に、志乃は入っていく。
「まさか、あの子が・・・・・・」
焦燥を滲ませ、志乃はヒビの入った階段を駆け下りていく。
地下一階。
そこに志乃が来た理由がある。
霊安室と表記されたプレートが傾いている。これは前からだ。
「あ・・・・・・」
志乃はその場にへたり込む。
霊安室の外壁にも亀裂が入り、観音開きの扉がひしゃげていた。
内側から加えられた強力な力で無理やりに扉は曲げられていたのだ。
恐る恐るその中を覗き込む。
中は暗い。だが夜目の利いた彼女は中を見ることができた。
霊安室の中には何もなかった。
天井から落ちたと思われる瓦礫が転がっているだけ。
それが彼女にとって悪夢の始まりだった。
「そんな! どうして・・・・・・いったい何処に!?」
もしアレが人を襲い出したら、私は・・・・・・
建物から出ようとした彼女は、人の気配を感じナースステーションのカウンターの下へと身を隠す。
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