第一話 ラブレター?

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それは蔵坂さんの仰るとおりだ。 授業開始からこれまで、風杉先生は一度も立ち上がっていない。   氷同士が擦れあう音、そして桶にコツンコツンと氷が当たる音が教室に響く。 「俺は暑いのダメなんだよ。本当ならクーラーの効いた部屋を借りて授業しようとしたのに、あの教頭が私物化するなとかぬかすから」   文句タラタラに教頭を批判する風杉先生。蔵坂さんは椅子に座り、ため息をついていた。 「もっと真面目にしなさいよね・・・・・・」   そう呟くのが聞こえた。 彼女とは同じ中学だったから性格は知っている。   何でも真面目にやらないと気がすまない子なのだ。 この担任と彼女はミスマッチすぎる。 「まあ誰だって暑いのはいやだろう。俺だってもちろん嫌だ。だが我に秘策アリ」 「「「どんな?」」」   暑さに唸る男子生徒の声に、風杉は目を光らせて机に肘を突き、口を開く。 「校長室の冷房を強奪しよう」 「「「無理無理無理無理無理!!」」」   この教師、目的のためなら手段も選ばないつもりらしい。 「気にするな。あんなタコ校長なんぞ、熱中症で倒れても学校側には問題なしだ」 「「「ひでぇ~」」」 「どうせ校長室でゴルフの練習でもしてるんだろ。そんなにゴルフやりたかったらゴルファーにでもなればいい。ついでに池にはまって二度と出てくるな」   一体この人と校長の間に何が起きたのだろうか・・・・・・ 「先生、まずは授業しましょう」 「確かに蔵坂の言うとおりだ。それじゃあ教科書三十八ページ、校長をドラム缶に入れる時のセメントの量を計算せよだが────」 「「「授業しろや!!」」」   生徒の訴えがシンクロした。
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